回虫 Ascarislumbricoides.
雌成虫は30cm以上、雄成虫は20cmに達する。頭部には3つの口唇をもち、これらは1個の背唇と2個の亜腹唇とで構成され、それぞれの口唇には乳頭を有す。雌成虫には前体部1/3の部分に交接輪がありここに陰門開口部が開口する。雄成虫の尾端は強く腹面側に巻き込んでおり、時折ここから交接刺をのぞかている。体内部の交接刺はグリセリン等で透徹(透過処理)を行えば観察することが可能である。稀に50mm以下の幼若虫体が排出される事もあるが、この様に小型の虫体が検出された場合には、必ず消化管やその他内部形態を調べて、アニサキス類幼虫など他線虫との誤認を避ける必要がある。
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1.ホルマリン固定された回虫。 2.雄成虫体。普通雌よりも小さいが大きさだけで雌雄の判断はできない。 3.雌成虫体。稀に10cm以下の小型の成虫もあるので注意が必要。 4.雌成虫体。上が尾端で下が頭部。 5.雌成虫体の頭部から約1/3程度の部分には交接輪が見られる。 6.雄成虫体の尾端。交接刺が飛び出している。通常は体内にあり外部には出ていない。 7.雄成虫体。透過処理を行えばこの様に体内の交接刺が確認できる。 8.頭部の実体像。三つの口唇が見られる。 9.口唇の透過処理像。感覚乳頭も確認できる 10.生きた雌虫体の胴部。生きた虫体は薄いピンク色をしており、透過光でも生殖管が確認できる。 11.雌虫体より取り出した卵巣と子宮。 12.雌生虫体の横断面。黒い部分が消化管で周囲を生殖管に覆われ外皮は厚く多筋細胞で覆われている。
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13.糞便の薄層塗抹標本中に見られる回虫卵。14.糞便中の受精卵15.糞便中の不受精卵 16.17.18.受精卵19.20.21.不受精卵。不受精卵には変形の著しいものが多い。 22.未熟虫卵 23.蛋白膜を持たない不受精卵 24.虫体の子宮内部より採取した無数の虫卵
回虫受精卵(fertilized egg)は卵径50−75μm×35−55μmで外層は蛋白膜に覆われている。虫卵内部には1個の卵細胞をもち卵殻との間に三日月状の空間をもつ事が多い。不受精卵(unfertilized egg)は卵径55−95μm×40−60μmで卵殻は受精卵に比して薄く虫卵内部は大小の顆粒で満たされている。変形虫卵が多い。
参考 
回虫は感染していてもほとんどの人には何ら自覚症状が無いので、突然に虫が排出されて驚かれ る方が多い様です。回虫はしばしば迷入する事がある為に口や鼻から出る事も多く、当検査室にも患者の鼻から出た30cm程の雌の虫体があります
※回虫症の検出件数はここ数年横這い状態で、私たちの検査室でも毎年、虫卵、虫体と合わせ数十例を検出検査しています。この原因としては有機農法や輸入野菜の増加が原因との説もありますが、まだ明確にはされていません。また、感染者のほとんどは海外渡航歴も無く、年齢、性別、居住地なども一様では無い事から、感染経路の早期解明の為には患者の食歴や習慣、生活環境などを確認しておく必要があるでしょう。
※近年、当検査室で検出される回虫卵のほとんどは不受精卵であり、虫体陽性で虫卵陰性の症例や、虫体も単数排出例が多い事等から、国内の回虫症は単数寄生例が増加しているのではないかと考えています

注意 画像の無断使用は堅くお断りします。(写真撮影 HIROYUKI FUKUTOMI)